磯部浅一手記(前編)

1936年2月に起きた2・26事件は29日に終息し、参加した青年将校等は収監され、取り調べを受け、公判が開廷されることとなった。首謀者の一人とされる磯部浅一は獄中で膨大な手記を書きその大部分は妻登美子によって持ち出され、後に世に出ることとなった。

最近の例は中公文庫出版の「獄中手記 磯部浅一」である。

他方、国立公文書館に閲覧番号「平28軍法00352」の2・26叛乱事件訴訟記録に収録されている磯部浅一手記は未公開の資料と思われる。手記は事件から3週間たった3月21日から書かれたと明記されており、原稿用紙に鉛筆書きで書かれている。内容は4部構成で、1部は磯部浅一の経歴及び維新革命運動に参加した経緯、2部は庶民階級の窮状と軍隊の実状、3部は軍隊の腐敗と皇軍の私兵化、4部は獄中感懐である。今回は1-3部の前編の全文を紹介する。

なるべく原文に近いよう心掛けたが、漢字転換で同じものが無かったり、3部中の皇軍相撃ちはカタカナを平仮名としたなどがありますことをご理解ください。